三浦 理紗子

所属:rT Miura.jpg
物質エネルギー化学専攻

キーワード:
生体材料、多糖、ナノ粒子、光音響イメージング

Email:
miura.risako.8x at kyoto-u.ac.jp

Homepage:
https://researchmap.jp/r_miura

近年、がん免疫療法は副作用が少なく完全奏効率が高い治療法として期待されている一方で、免疫療法が奏功せず、悪性度が高い、Cold Tumor と呼ばれる存在も明らかとなってきた。Cold Tumor は M2 マクロファージが多数分布し、T 細胞の浸潤が少なく、腫瘍免疫環境が不活性という特徴を有する。我々は、Cold Tumor の早期診断および治療を目標に、Cold Tumor を標的とした近赤外蛍光・光音響造影剤の開発に取り組んでいる。
光音響イメージングとは、光吸収体がパルスレーザー光の照射により熱膨張・収縮を繰り返すことにより発生する音響波を観測し画像化する手法であり、生体深部まで非侵襲的に造影可能という利点を有する。しかしながら、光音響造影剤として機能する近赤外蛍光色素は、一般に疎水性が高く、生体内動態に課題が残る。そこで我々は、親水性多糖のプルランに疎水性の近赤外蛍光色素である IR820、Cold Tumor に分布する M2 マクロファージ標的部位としてマンノースを導入した Pullulan-mannose-IR820(PMI)を合成し、Cold Tumor へ安定的に近赤外蛍光色素を送達可能なキャリアの開発をおこなった。PMI は、水中で IR820の疎水性相互作用を駆動力に自己組織化ナノゲルを形成し、光音響プローブとして機能することが示された。さらに、マンノースの修飾により M2 マクロファージと能動的に相互作用し、腫瘍への集積性の向上により腫瘍の光音響造影コントラストを向上した。
PMI ナノゲルは、疎水性会合点へ疎水性分子を複合化可能であり、現在、疎水性が高い低分子医薬品(抗がん剤や免疫アジュバント)を複合化し、光音響造影と化学療法あるいは免疫療法を同時に実現するセラノスティクス医薬品へと展開している。